ゆっくりと日が沈むころ、
20世紀初めのクラシカルな建物が立ち並ぶエリア、
外灘(バンド)にオレンジ色のやわらかな光がともりはじめます。
ときおり川からの風に運ばれて、
船の汽笛(きてき)の音が聞こえてきます。
この街は、これまで私が旅したどんな街よりも
いちばん夢を見られそうなところだと思いました。
「東洋のパリ」と呼ばれた1930年代には世界中のすべてのものが集まり、
世界一スタイリッシュな男女が集まった、とパパに聞いたことがあります。
こうして当時のままの景色をながめていると、
いっしゅん、タイムスリップしたような気分になりました。
ここを舞台に、さまざまな物語が生まれたんだろうな。
夜になっても、まだ湿った風が吹いています。
目の前には、美しくライトアップされた石づくりの建物。
大きな川をはさんだ向こう岸には、
銀河のようなネオンがまたたく、近未来的な風景。
まるで、上海(シャンハイ)の過去と未来を
同時にながめているみたいです。
〈アール・デコ建築とは?〉
外灘(バンド)の街並みや建物をよく見てみると、
門の細工や窓の形などに、植物をあしらった
クラシカルなデザインがあふれています。
これが1930年頃に流行したアール・デコ建築です。
こんなエレガンスも上海の魅力のひとつなので、
ゆっくり眺めてみてくださいね。