にぎやかな上海(シャンハイ)中心部のほど近く。
そこには、時間がとまったようなヨーロッパの古い街並みがひろがっていました。
教えてもらった住所の近くをきょろきょろしていると、
「ニイハオ(こんにちは)、リカ!」とメイリンさんが
レンガ色の洋館から顔をだしました。
「これがメイリンさんのおうちなの?」と聞いたら、
「そうよ。1930年代に建てられた洋館なの。
上海では老房子(ラオファンズ)って呼ばれているのよ。さあ、入って!」
と、大きくて重そうなとびらを開けてくれました。
アール・デコの照明がてらす、長い廊下(ろうか)。
淡い光をあびて進むと、ぜいたくな細工の大きな鏡。
昔、社交界のレディーたちが使っていたんだろうな。
お部屋には、当時の布がそのまま残る、トロリとした肌ざわりのソファー。
ここでは、上海の熱気が、ひんやりと冷やされていくかのようです。
お茶を飲みながら、メイリンさんといろんな話をしました。
「どんどん変わっていく上海で、
ここだけは変わらないって思えるから、とても落ち着くの。
アジアの女性が、私の目にキレイにうつるのは、
ファッションやメイクがどんなに変わっても、
しんの部分は変わらないからかもしれないわ」と言いました。
変わるものと変わらないもの。
私の中で、ずっとありつづけるもの。
香りのよいお茶を飲みながら、それはなんだろう?と考えてしまいました。
〈旧フランス租界について〉
メイリンさんが住んでいる街は、旧フランス租界(そかい)といいます。
昔、フランスが統治していたエリアだから、こう呼ばれているんだって。
上海で出会った人たちが口々にたたえるのは、この街の美しさ。
この通りぞいの建物は、国が保存指定しているから、
街並みの美しさがずっと保たれているそうです。
〈老房子(ラオファンズ)について〉
世界中から集まった建築家たちによって
次々に洋館が建てられたのは、1920年から30年代のこと。
その当時のまま残された古い洋館を
老房子(ラオファンズ)というそうよ。