京都についたのは、夕方近く。
ひさしぶりに聞いた日本語は、関西のことばだったけれど、
とてもなつかしくて、ずっとはっていた心の糸が、ふっとゆるんでいきます。
ああ、やっぱり日本って、おちつきます。
私は駅員さんに教えてもらった「京都らしい」風景をもとめて、
さっそく祇園白川(ぎおんしらかわ)へ向かうことにしました。
“町家(まちや)”と呼ばれる京都の伝統的なおうちがならぶ白川ぞい。
歩いていると、格子戸(こうしど)の奥から
かすかに話し声が聞こえてきたり、
のき先で、そっとすだれがゆれるのが見えます。
ときおり、風が、緑の香りをはこんでは鼻をくすぐり、
川の音が、耳にやさしく入ってきました。
住宅地に住んでいた私にとって、祇園白川は、はじめて出会う日本の風景です。
日本のなかにある、変わっていくものと変わらないもの。
これまで私は、日本の変わっていくものばかりに
気をとられていたのかもしれません。
メイリンさんの「私は京都が好き」という言葉をきっかけに、
私は、本当の日本を、今、はじめて知りたいと思いました。
江戸時代から明治初期にかけての家が並んでいます。
国がとても大切に保存しているそうです。
〈マチヤって?〉
間口(家の正面)がせまく、奥ゆきが深い、京都の昔ながらの木造の住宅。
よく見ると、小さな虫かごのような窓や、屋根のかわらの細工なども美しいのです。