手の中につつまれたお抹茶(まっちゃ)の深く濃い緑。
そのふちには、たてたばかりのお抹茶にのこる
こまやかな泡が音もなくパチンとはじけました。
朝もやをうすくしたような空気が、
部屋のそこかしこをゆっくり遊ぶようにただよい、
すりぬけては庭にぬけ、木々の葉をそっとゆらしていきます。
目をつぶると、心の奥まで
すーっとしずかになっていくようです。
まるで、時が止まったような感じになりました。
ここは、どこなのでしょう?
私は、だれなのでしょう?
香り高く、にがいお抹茶を口にして、
私はもとの香山リカにもどりました。
〈お抹茶をいただいたお寺〉
「宝泉院(ほうせんいん)」というお寺です。
柱を額縁(がくぶち)に見立てた額縁庭園から見えるのは、
あざやかな緑と樹齢700年の五葉松(ごようまつ)。
えん側では、おいしいお抹茶と和菓子がいただけます。